気づかれにくい「発達性ディスレクシア」(発達性読み書き障がい)

みなさまへ

読み書きが苦手であることだけで、能力を評価しないでください。学校では、読んだり書いたりの学習がほとんどです。みんなと同じ方法で学習しようと思うとハンディがあります。お子さんに合わせた学習方法を獲得することが大切です。そして、本人の努力だけでは上手くいかないことは必要な合理的配慮を受けることで、皆と一緒に学びができます。そのためには、お子さんの苦手な特性を知る必要があります。

また、学ぶ方法は、教科書や参考書からの文字からだけではありません。デジタル機器からインターネットやDVD教材、教育TV、などからの映像や音声入力、体験など、見たり聞いたりしても学べます。その方が学びやすい人も多いです。

俳優のトム・クルーズ氏は、アシスタントの方に台本を読み上げてもらいセリフを覚えてあの名演技をしています。作家のアガザ・クリスティさんは、代筆をしてもらって多くの素晴らしい小説を世に出しています。映画監督のスティーヴン・スピルバーグ氏は、映像で表現してやはり素晴らしい作品を生み出しています。

学校の成績が、その人の能力のすべてを評価しているわけではありません。支援する人たちはそれをよく理解して、常にお子さんに寄り添い、本人に必要な指導や支援ができるサポーターでいることが重要です。

どの子も周りから大事にされ、苦手さをもったありのままの自分を愛し、自分らしい幸せな人生を歩んでいって欲しいと願っています。

発達性ディスレクシア(発達性読み書き障がい)とは?

発達性ディスレクシアのある子どもたちの中には、小学生の高学年や中学生になっても、ひらがなを完璧に習得できていない子たちがいる。毎週の漢字テストでは合格できているのに、1ケ月前に覚えたはずの漢字が半分以上思い出せない。音読は可能だが、読むスピードが遅いために読解に時間がかかりテストの時間内にすべてをやりきれない。作文が思うように書けない。板書された文字列をノートに写すことがスムーズにいかず、授業のスピードについていけないなど、の困難さがある。

この読み書きの困難さの背景には、脳機能の発達の特異性があるとされている。
後天性と区別するため、生まれつきの場合は「発達性」と表現する。
宇野彰・筑波大元教授が2009年に実施した調査では、出現率は小学生で7%。40人学級で2〜3人いる計算となる。発達障害の中でもっとも高い出現頻度であるにもかかわらず、親も先生も気づきにくい「目に見えない障害」ともいわれている。

発達性ディスレクシアは、学習障がい(LD)の中核

米国やヨーロッパ諸国では、「ディスレクシア」という用語が大切にされている。
「LDはディスレクシアに始まり、ディスレクシアに終わる」とも言われ、ディスレクシアであると診断されると、多角的なアセスメントから総合的な視点で「個別の指導計画」が作られ、本人の教育的ニーズに寄り添って手厚い指導、支援が継続されるという。

さて、日本では、どうでしょうか?

「努力不足だ」「頭が悪い!」等と言われ続け、放置され、子どもたちは自尊感情が低下する。
生まれつきなので、みんなとの違いが自覚できないために「頑張れ!」と言われても本人はどうしていいか分からない。
そのお子さんにしかない素晴らしい才能を持ちながら、学ぶ意欲や生きる意欲を失い、「自分は、バカだから仕方がない・・・」と教室の片隅で見つけてもらえず、苦しんでいる子もいる。いじめ、自殺、不登校や虐待など二次障害に移行することもみられる。

発達性ディスレクシアは、周りの大人が理解することが重要

周りとの違いに気付き始めるのは、小学校に入ってから。

問題文などを読み上げてもらえば理解できる子もいる。タイピングを覚えればデジタル機器で文章が打てるようになる子もいる。読むより聞く方が理解しやすい。読み上げ機能を使うだけでだいぶ違う。漢字を読むのが大変な時には、漢字にルビをふるなど。

つまり、できないのではなく、その子のやりやすいやり方に変えれば学習が楽になる。学び方の回路がみんなと違うことを周りの大人が理解することが重要である。

発達性ディスレクシアの理解の第一歩は、“障がいを知る事”

その子の客観的な状態を周りの者が共有しておかねばならない。
1人1人に適した学習方法や支援が必要である。
本人と保護者、先生と支援員など、特にその子に直接関わる人たちが話し合い、本人に必要な指導や支援を踏まえた学びの充実に向けて折り合いをつけること。
それには、「個別の教育支援計画」の作成と共有が、なくてはならないものとなる。

発達性ディスレクシア(発達性読み書き障がい)の理解の第一歩は、本人も周りも本人の障害特性とその起因を知ることである。そのためには、適切なアセスメントを受けることが必要である。

そして、本人の努力ではどうすることもできないところは「個別の指導計画」に基づく「合理的配慮」等による環境支援によってみんなと同じスタートラインに立って学べるように配慮することが必要である。また、本人が自分の特性を知り、自分から支援を求めていけることが望ましい。

(東海テレビ NEWS ONE)人により程度や特性にバラつき…生まれつき読み書き難しい『発達性ディスレクシア』第一歩は“障害を知る事”

子どもは、本人の特性と環境が影響し合って成長する

当会では、本人の特性を活かして子どもたちのより良い育ちへの支援ができるよう、みんなで育てる環境作りを目指している。2010年、「特別支援教育支援員(学習支援員)養成講座」をNPO法人子ども支援室カシオペアと共に開設。特別支援教育支援員に必要な講座や子どもの理解・支援、発達障がいを持つ子どもの親の子育てに役立つ講座等を開催。

一方、「合理的配慮の提供を目指し、教職員 と支援員とが共に歩む学校づくり」を目指す学校長のリーダーシップのもとで、「教員と特別支援教育支援員との効果的な連携による支援のあり方」や「教員との効果的な連携ができる特別支援教育支援員の学びやサポート」について効果をあげ、その成果を学会での論文発表等で教員の方を含め広く一般の方々へも報告、共有することができた。